こぼれ花散策 


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                  日吉丸     TT

            柳壇「こぼれ花」第33号の2

        キャプチャ             
            前号作品より抜粋   板垣 孝志
         こぼればな3
  セカンドに落とす下山の膝使い  由美

 オートマチックの車が全盛の時代になった。ク
ラッチペタルを踏んでギアチエンジをする、これ
が運転の醍醐味でもあったのだが・・・
 さて齢を重ねると足腰が弱る、特に膝は痛めや
すく、ここを壊すと先ず治らない。
 危険な下り坂や階段は慎重さが第一、セカンド
でもローでも良いでは無いか。

こぼればなillust444
  五十年前の光を追っている   扶美代

 首都圏に大雪が降った昭和四十四年。人類初の
月面着陸・アタック№1・やったぜベイビー。
 パンタロンを穿き黒猫のタンゴとウエストサイ
ド物語を踊るのはナンセンスなのかワルノリなの
か。夜明けのスキャット・あっと驚くタメゴロー。
おにぎりせんべいにはUCCの缶コーヒーが似合う。
葉書きは七円、封書は十五円。
 日本が元気だった頃、しかしまあ歳をかさねまし
た。「それをいっちゃーおしめえよ」は寅さん。
こぼればなillust444
  また一人薄暮の無人精米所   夫美子

 村役場と農協が同じ建物の中に在った頃、併設
して精米所が作られた。そこの管理者がオッチョ
コチョイで、普通の米ともち米を混ぜて搗いてし
まったが、依頼したおばあさんは「牡丹餅にする
からええよ」と怒りもしなかった。
 今は自販機のように百円で十キロ、お好みの加
減に搗いてくれるがそこには会話がない。
 夕方に仕掛けようとした米が無い。これはオッ
チョコチョイではなく、年齢と共に弱ってきた記
憶力のせいだろうか。薄暮の無人精米所が侘しい
風景を映し出す。

こぼればなillust444
  箍すこし緩んで夜の街うごく  むねお

 最近では耳にしなくなったが、一般に事務職系
をホワイトカラー、技術職系をブルーカラーと呼
んでいた時代があった。
 事務職はスーツにネクタイが必須条件、勤務時
間中は襟元が曲がっただけで「だらしない」と叱
られる。ネクタイこそブルーカラーを統率スルタ
ガ、鵜飼の手縄であった。
 それ故に仕事が終われば待ってましたと居酒屋
に繰り出すのである。スーツの社員バッジ裏返し、
ネクタイを緩める、緩めても外さないのはホワイ
トカラーの矜持なのだろう。
 だが宴会などで盛り上がると時代劇のお殿様が
病気になったように頭に横結び [アラエッサッサ
ー」などと踊りだす・・・そんな時代もあった。
こぼればなillust444
 ツバメの巣朽ちて閉院の張り紙   憲子

 ツバメがやって来て軒先に巣を作ると演技が良
いと言い伝えられ、特に農家では大切にされた。
ツバメも点滴のカラスが人家に寄り付かない事を
知っているから、これほど安全な場所はない。
 ごくまれにアオダイショウが近ずいたりするが
運河良ければ人間が追い払ってくれる。
 非正規社員にされる若者が増え、年金の破錠な
どが噂されると少子化が進む。
廃業をしたのは小児科だろうか、「閉院」の意味
はツバメには判らない。
こぼればなillust444 
  黄砂降る兆し 三回忌の匂い   真子

 大切な人の位牌の前に静かに座ると線香の灰の
その落ちる音までが聞こえるような感じがする。
 三回忌七回忌…黄砂の気配。
 次節は容赦なく巡れども亡き人を偲ぶ気持ちが
薄らぐ事はない。
こぼればなillust444 
踏んじゃった猫あやしたりすかししたり 句ノ一

 川柳塔誌六月句会の兼題「ぐにゃ」の入選記録
の中に【こんなとこで寝るから踏んでしまうねん
大久保真澄】さて踏んだのは何でしょう。
その近くに【玄関を開けてくずれる酔っ払い 
古今堂蕉子】も載っているから繋げて考えると面
白い。踏んづけられた戸籍筆頭者の悲憤は筆舌に
尽くし難いのではないか、合唱。
 ピアノの初心者が『猫踏んじゃった』の演奏に
四苦八苦、苦心惨憺、孤軍奮闘の図に見えない事
もないが、『猫踏んじゃった』の作曲者と同じで
真相は判らない。
こぼればなillust444
  アスパラの穂先のあたりからカノン  憲子

 被せた上に被せてその上にまた被せ・・・アス
パラの穂先はまるで輪唱を奏でているようだ。
田んぼに水を張って田植えが始まる頃、アスパラ
ガスも市場に並ぶ。[アスパラ=本名アスパラガス]
🎵かえるの歌が聞こえてくるよ♪
 輪唱(カノン)でよく使われるお馴染みの曲には
『もみじ』『静かな湖畔』などがある。
 高尚なところでは『パッヘルベル』このあたり
になると筆者には手に負えぬ。
こぼればなillust444 
  二人からひとり揺れているブランコ  真子

ひとりが座り、もう一人が立って漕ぐブランコに
は勢いがあったし夢も会話もあった。
 長い時間が経った気もするし、ほんの短い時間
だったかも知れない、気が付けば一人。
 でも漕ぐのを止める訳にはいかぬ。やめたら負
けだ。ゆっくりでも静かでもいい、たぶんこのま
まずっと漕ぎ続けていくのだろう。
こぼればなillust444
  歩き出さねば次ページが無い  留理恵
  躊躇する背を押す花吹雪    留理恵
  エンドロールを待てず駆け出す 留理恵


 独りひっそり、丁寧に暮らそうと思うのだが、
花吹雪を目の当たりにすれば残り時間を急かされ
る。どことなく落ち着けないのは春愁のなせる業。
こぼればなillust444
  美しい骨になりたい歎異抄    道子
  ひまわりを咲かそう終章のページ 道子


 【善人でさえ助かるのだから悪人はなおさらだ】
極楽往生保証相書代わりに読まれる歎異抄。お骨上
げには何度も立ち会ったが、健康で長寿を全うされ
た方のお骨は綺麗だったような気がする。
 終章のページにひまわりが咲きますように。
こぼればなillust444
  山はもう密かに遺書をしたためる 辰雄

 死後の遺された家族が慌てないよう、事細かく
指示書を残すのがえめてもの気遣い。

こぼればなillust444
 日川協のホームページに暗号句検索欄があった。
仮に『山』とインプットすれば過去の大会の入選
句や、番傘一万区集などに掲載された『山』の句
が瞬時に並ぶ便利なサイトだったが、最近なぜか
取り消され、剽窃や暗号句のチエックが困難にな
った。先達の句は貴重な史料、その資料の大半を
抹消する理由が分からない。こんな事では川柳の
山も遺書をしたためかねない。    孝志             
 
 竹のライン 

        うきうき鑑賞<前号評者作品から>
                                                          鶴本むねお

  畳み方忘れた傘を差している 孝志
   竹のライン
 今号は鑑賞者に難題を突きつけられたような5句。
いずれも取り上げたいが、多様性を秘めて苦心惨憺。
「畳み方忘れた」を、まともにとれば“そんなアホ
な”となりそうだが、「たたむ機会を逸した」、そ
こに人間の哀歓が見え隠れして面白みを演出した感
があり、さすがと思わせられる。
 そこで「畳み方」をじっくり考えてみる。答は読
み手それぞれで、寧ろ漠然とした思いにこそ川柳味
があるといえば、こじつけになるが、鑑賞者にもそ
んな逃げ場もあっていい。畳むチャンスを失った当
人にとっては生来の失態なのかもしれないし、それ
しか手段がなかったはにかみさえ見て取れて愉快だ。
わざとらしいくすぐりはユーモアというにはお粗末
で、こんな作品こそは本当の“笑い”を秘めた一句
と言えよう。

 その山に行くべし白い杖ついて  孝志
   竹のライン
 白杖の人に出くわすと気遣いの筈が、どのように
アシストしたらいいのか、などとどぎまぎする。そ
んな時こそ自然体で接するのが常道なのにそれが難
しい。ご当人は余程のことがない限り、そんな薄っ
ぺらな善意を期待していないからだ。
 そして、ご当人はそんなことは問題ではなかろう。
ご自身の目的に向かって淡々と我が
道を進む。目標の山は険しいであろうが、幾何の難
関を越えて更なる前進あるのみ。健常者には想像に
難い日々の生活を越えてきた世界がなおも延々と続
くのであろう。「その山に…」、人間の強さを強調
して余りある。
                               

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なくて七癖 山口亜都子

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                                                                                          TT

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                                   柳壇「こぼれ花」台33号ー1会員作品

       こぼればな3
父の日が渇いた色でやって来る
  荻野 浩子 (堺市)
こぼればなillust444 
ラッシュアワードリブル武器に通う路
  西尾 この実 (橋本市)大学1年
こぼればなillust444 
Barとあり昨日も今日も戸は開かず
  板垣 高志 (大和高田市)
こぼればなillust444 
タンポポの丑三つ時に咲きたい気持ち
  山口 亜都子 (三重・美浜町)
こぼればなillust444 
盂蘭盆会胸の蛍を解き放つ
  福田 道子 (天理市)
こぼればなillust444 
もくろみ秘めて超える境界
  森吉 留理恵 (柏原市)
こぼればなillust444 
抜歯した口に見せてる青い空
  句ノ一 (伊豆の国市)
こぼればなillust444 
祭りの夜の素足は少し恥ろうて
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
こぼればなillust444 
捨てられぬプライスレスの子の手紙
  日下部 敦世 (松戸市)
こぼればなillust444 
今日は告げんと紫陽花彩を変え
  上窪 一笑 (吉野町)
こぼればなillust444 
平和惚け等身大の絵をはずす
  久保田 真子 (土佐市)
こぼればなillust444 
シルクハットの鳩はまあるく眠らせる
  山崎 夫美子 (大和郡山市)
こぼればなillust444 
納税をしたふるさとが叱られる
  毛利 由美 (つくば市)
こぼればなillust444 
熱中症負けずに心の散歩する
  南 芳枝 (五條市)
こぼればなillust444 
笹舟を流した川よ 子を逃がす
  鶴本 むねお (下市町)
こぼればなillust444 


こぼればな3 

エッセ-    imagesQJ4VMND7.jpg
  なくて七癖  山口亜都子

 格言と言うのは、まことに人の本性や人生を
とらえている。この「なくて七癖」などもそうで、
あとに「あって四十八癖」と続くと、ちょっと
一癖ありそうな人には、一つどころではない、四
十八癖はあるというもの。ほかに「人に七癖、我
が身に八癖」というのもある。手に負えないなと
おもった人にあたった時は、自分にはそれにプラ
ス一癖はあると、つまり謙虚な心構えを持つとい
いということだろう。深い人生訓を語呂もよく、
口をついて出てくる言葉に仕上げたものだ。癖が
強いなとおもっていたら、意外、そうでもなかっ
たというようなこともあるだろう。
 今も昔も同じようなことで人は四苦八苦して来
たのだろう。そういう感慨も、その時のモヤモヤ
落ち込みを晴らしてくれる。
 さて「なくて七癖」 友人がある友人の悪口を
言う。他人には顔見知りではなく、私がそれぞれ
と親しいというケース。それぞれがお互いに言動
や行為を受容できないのだろう。そんな時、イソ
ップ物語の「卑怯なコウモリ」という話を思い出
す。獣と鳥の仲が悪い時、獣には「全身に毛が生
えているからわたしは獣です」と言い、鳥には「
羽があるのでわたしは鳥です」と言う。つまりど
ちらにもいい顔をする(物語の結末、コウモリはそ
れがばれ、どちらからものけ者にされる)。 まさ
か自分はコウモリほどはひどくないが、いい加減
な人間だとおもい疲れることもままある。
 これを含め、人にあまり期待し過ぎない。還暦
を過ぎたあたりから、こういう心持に拍車がかか
って来た。若い時はこの逆で、年を取る効用でも
あるだろう。
 結局、人はひとりである。ここに行き着けばど
うということはないのである。みんな途上の人で、
もちろん自分もそうであるから「まぁいっか」で
ある。
 こういう作業を、世の中の人はもっと早い時期
におこなっているのかもしれない。ずいぶんと晩
生なことだ。「そ(あなた)は風か」は宇野千代の
エッセイの中の言葉。人も風も、同じように私を
過ぎてゆく風に過ぎないということだろう。
「気に入らぬ風もあろうに柳かな」ご存じの名句。
作者は江戸期の禅僧仙崖。吉行淳之介も好きだっ
たという。
 ままならない、憂きこの世であるという確信は、
生きる大きな力でもある。   亜都子
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川柳遇論

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                                             奥入瀬    寛
                         暑中お見舞い申し上げます
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            柳壇「こぼれ花」第32号の6
         こぼればな3
 ひたすらに祈る戦のない令和
  荻野 浩子 (堺市)
 こぼればなillust444
 ミニマリストで通す独り居
  森吉 留理恵 (柏原市)
こぼればなillust444
その山に行くべし白い杖ついて
  板垣 孝志 (大和高田市)
こぼればなillust444
 リフオームはするが父さん古いまま
  西澤 知子 (橿原市)
こぼればなillust444
 青嵐ふたつの道は歩けない
  下谷 憲子 (桜井市)
こぼればなillust444
 うつぷして泣ける木製の机なら
  山口 亜都子 (三重・美浜町)
こぼればなillust444
 傷心の深さへ傘をさしかける
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
こぼればなillust444
  黒猫に飛び込み自殺されかける
   毛利 由美 (つくば市)
こぼればなillust444
 御無沙汰と一筆箋の温い風
  福田 道子 (天理市)
こぼればなillust444
 令和の薫風へ泳ぎだす美脚
  那須 鎮彦 (五條市)
こぼればなillust444
 パール入り口紅自分へご褒美
  太田 扶美代 (藤井寺市)
こぼればなillust444
 昭和史の周りで拾う血の温さ
  久保田 真子 (土佐市)
こぼればなillust444
  逆さまにしても陽気な花畑
  句ノ一 (伊豆の国市)
こぼればなillust444
 ラプソディー春には春の眉をひく
  山崎 夫美子 (大和郡山市)
こぼればなillust444
 風邪ひかぬように迎える収録日
  日下部 敦世 (松戸市)
こぼればなillust444
 葛城山人形延びて掴む赤
  南 芳枝 (五條市)
こぼればなillust444
 独りぼっちもいいぞジャガイモの花盛り
  鶴本 むねお (下市町)
こぼればなillust444
 里山に若い鼓動の芽が伸びる
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
こぼればなillust444

こぼればな3 
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 せんりゅう遇論    むねお

     苦吟すること

 そのむかし某先輩が、ある川柳誌の依頼原稿で
最近の自身の川柳観について、「楽しかるべきはず
の川柳が、苦しみを感じては意味がない」と吐き捨
てた。 この先輩は、その後も当たり障りの無い句
を書いていたが、結局最後まで続けること無く途中
脱却の憂き目をたどった。筆者はその心理が今も
理解できずに居る。
 少々話は飛躍するが、昭和初期の有力紙で、当
時の著名な川柳作家が、“題詠と雑詠の取り組む
姿勢の違いについて″と題する実に的を射た文章
を読んだ記憶がある。 その一節に「題詠を十句作
るより雑詠一句書く方が苦しい」と。まさにその通り、
苦しみの中からこそ真の作品に行き着くのである。
「雑詠は難しい」と、人はよく零すが、その通り、苦
しみの中から生まれた作品ほど愛着がある。
「句が書けない」「出来ない」とぼやくぐらいなら、
思いっきり苦しみ抜くことだ。楽しいだけで出来る
川柳なんてたかがしれちる。      むねお記
  


        蓮




過日 山口亜津子

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                                       八重咲ドクダミ    亜都子

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                                      柳壇 「こぼれ花」第32号-5

                     こぼればな3                        
 ご退位へ百花繚乱伊勢の旅
  荻野 浩子 (堺市)
こぼればなillust444
 エンドロールを待てず駆け出す
  森吉 留理恵 (柏原市)
こぼればなillust444
 キャベツの葉脈の哲学的組織図
  板垣 高志 (大和高田市)
こぼればなillust444
 玉子サンドに鼻歌をきかせます
  西澤 知子 (橿原市)
こぼればなillust444
 アスパラの穂先のあたりからカノン
  下谷 憲子 (桜井市)
こぼればなillust444
 繕ってあって花柄 母のショール
  山口 亜都子 (三重・美浜町)
こぼればなillust444
 一枚の舌しか持たぬ不器用さ
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
こぼればなillust444
 女子会のにぎやかだけじゃないわだい
  毛利 由美 (つくば市)
こぼればなillust444
 非常食同化出番のないように
  福田 道子 (天理市)
こぼればなillust444
 真っ青な令和の空の自由主義
  那須 鎮彦 (五條市)
こぼればなillust444
 捨て石になる歓びを知りました
  太田 扶美代 (藤井寺市)
こぼればなillust444
 遺伝子を拾う 酒好き女好き
  久保田 真子 (土佐市)
こぼればなillust444
 耳鳴りのシュプレヒコール老い進む
  句ノ一  (伊豆の国市)
こぼればなillust444
 月冴えてラクダの瘤は銀の水
  山崎 夫美子 (大和郡山市)
こぼればなillust444
 ラジオだが写真をアップするらしい
  日下部 敦世 (松戸市)
こぼればなillust444
 6Bにあう魂ゆらり焼きあがる
  南 芳枝 (五條市)
こぼればなillust444
 乙姫のこころが読めぬ玉手箱
  鶴本 むねお (下市町)
こぼればなillust444
 残照の背に一歩を刻み込む
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
こぼればなillust444 

こぼればな3

エッセイ                                        imagesQJ4VMND7.jpg

  過 日   山口亜都子

 過日、通っているプールの駐車場入り口で、子
供たち三人に道を譲られた。連日のように報道さ
れる交通事故、高齢者ドライバーの誤作動による
ものが多い。少し前まではあおり運転だった。犠
牲者が幼児であれば、世の親たちの心労はいかば
かりのものか、その家庭の団欒で、父や母は子供
たちにせめて言う。
「車には気を付けて。車が来たら、いったんとお
りすぎてから行くのよ。こうやって、お先にどう
ぞと先に行ってもらいなさい」身振り手振りなど
もしたかもしれない。大人社会の犠牲になってた
まるものかと、自分たちで考えたのかもしれない。
 にこやかに、子供たちはわたしの車が行き過ぎ
るのを待っていた。
 その後、その広い駐車場で存分に遊んでいた。
(そうか、今日は土曜日だったのだ)
 天使たちは、天真爛漫である。
 親は四六時中付いているわけにはいかない。柱
にはりつけているわけにはいかないのである。
 その帰り道、一台の車が後ろについた。この頃、
後続車があると広い道で先を譲る。車間距離をと
ってくれずピッタリと付かれ、その速度もおそろ
しく速い。トンネル内でもそれは変わらない。わ
たしは法定速度である。同じように道路の端に車
を寄せ、やり過ごしている人を見かける。
 いつものように道を譲ろうとおもった。けれど
も、その車は法定速度を守っており、その必要は
ないということにしばらくして気が付いた。こん
なことは何年振りかとおもわれる程、それを奇異
に感じた。どんな人が運転しているのかと好奇心
が涌いた。別れ道で見ると、運転をしているのは
若いお母さんで、助手席には二,三歳の男の子が
補助シートに座っていた。楽しそうだった。
 このゴールデンウイークに帰省した息子は「そ
ういえば、この頃あおり運転は少なくなったよう
におもうね」と言った。ドライブレコーダーの設
置などもあるだろう。わたしは迷ったが結局付け
なかった。
 高齢者ドライバーによる事故については、免許
を返上すると生活に支障があると言われることが
多い。買い物、病院通いなど、それらがむずかし
くなるという。田舎など、公共の交通機関が少な
いところではもっともなことだとおもう。では、
わたしの場合はどうだろう。買い物については、
目下は移動販売車が週一回来ている。二軒あった、
小売店のうち一軒は高齢のためだろう閉めた。残
る一軒も遅かれ早かれそのようなことになるだろ
う。ネットショッピングということも考えられる。
子供たちに物品を送ってもらうという手もあるだ
ろう。ヘルパーさんに頼んでもいいかもしれない。
それも、人材があればという話だ。諸々の方法は
あるだろう。昔であれば、隣近所にそんなことを
頼める人も居たのだろうけれど。
 さて、どうなるかとおもう。それは遠くない未
来である。
 社会の問題は先ず弱者が被害をこうむる。
 これも過日、若いお母さんがひとりの子供の手
を引き、もうひとりをおどろくことに紐でつない
でいた。「犬じゃあるまいし」などの憤慨は笑止
である。
 空き地で泥んこになって日暮れまで遊んだとい
うようなことはもう絵空事。空き地は無い。土も
無い。それらがある所には子供たちが居ない。
 母胎とつながっていた臍の緒を切り、この世界
に子供たちは飛び出して来る。「自由」である。
その自由をつなぐ紐のなんというせつなさだろう。
                 亜都子
                 イラスト (28)












 
 
東大寺散策と修二会 荻野浩子


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                                              壷 石     TT
                              
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                                              柳壇「こぼれ花」第32号ー4・会員作品
こぼればな3

 十連休騒ぎ浮足立っている
  荻野 浩子 (堺市)
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 メビウスの輪の見せぬ断面
  森吉 留理恵 (柏原市)
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 畳み方忘れた傘をさしている
  板垣 高志 (大和高田市)
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 夏場所は栃ノ心のリズムです
  西澤 知子 (橿原市)
illust4448_QVga.png
 サクランボ透けて少女の夏帽子
  下谷 憲子 (桜井市)
illust4448_QVga.png
 光など届かぬとこで深い息
  山口 亜都子 (三重・美浜町)
illust4448_QVga.png
 背信の水面は波を逆立てる
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
illust4448_QVga.png
 セカンドに落とす下山の膝使い
  毛利 由美 (つくば市)
illust4448_QVga.png
 饒舌に載せてやりたい陀羅尼助
  福田 道子 (天理市)
illust4448_QVga.png
 懐かしむ記憶が消えてゆく令和
  那須 鎮彦 (五條市)
illust4448_QVga.png
 目を閉じるずっと信じていたいから
  太田 扶美代 (藤井寺市)
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 花の名も忘れ手軽になる絆
  久保田 真子 (土佐市)
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 新しい翼が届く雨上がり
  山崎 夫美子 (大和郡山市)
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 SNSより無気味な公共の電波
  日下部 敦世 (松戸市)
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 策動が衣食運んでくれた日々
  南 芳枝 (五條市)
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 一途なものに星の滴が降りそそぐ
  鶴本 むねお (下市町)
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 どっぷりの墨へ命を躍らせる
  佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
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 こぼればな3

エッセー    cof103.gif
  
 東大寺散策と修二会  荻野 浩子

 底冷えの籠松明の翌日、二時間も待って回廊側
の最前列で修二会の火の粉を浴びてきた。漆黒の
闇に豪快な杉の火玉が飛び散るさまは、やはり迫
力があった。何年振りだろう。軽装で点火の瞬間
を待ったが、寒さも吹き飛んでしまった。
 二十年ほど前に春日山原始林から柳生街道を歩
き、滝坂へ降りて修二会の火の粉を浴びて帰った
こともあった。あの頃は三万歩なんてごく普通だ
った。が、足を痛めてからはひどく用心するよう
になった。遠出はしなくても、東大寺周辺はいく
らでも散策コースがある。陽が落ちるまでの時間、
写真家の入江泰吉さんの旧居を訪ねた。土塀が続
く風情ある町並みの東大寺旧境内の中にあり、依
水園や吉城園が近くにある旧居。玄関へ一歩入る
と、窓いっぱいに、淡いピンクの侘助が春風に揺
れていた。その下を吉城川の水の音、贅沢な時間
だった。どこから入ってきたのか一匹の鹿が落ち
椿を食べていた。冬枯れの庭は訪れる人もなく、
心地よい時間が流れていた。
 交流のあった志賀直哉や、白洲正子、楠本健吉
たちのサロンになったソフアーに腰掛け、大和路
の写真集のページを操った。山の辺の景色や、万
葉植物、まほろばの仏の写真には見ていて飽きが
こない。癒しの時間だった。構想を練ったアトリ
エや暗室に佇み、入江泰吉像を膨らませていた。
風邪は冷たいが、心はほっこりと、もう春だ。
 負け惜しみではないが、足を痛めてからひとと
きを大切に一期一会を楽しんでいる。修二会もま
た違う発見があった。正倉院や、広大な東大寺講
堂跡の大きな礎石に歴史を振り返り、新たな感動
を覚えた。大仏殿にも安泰を祈願してきた。
 薄暗くなると、六メートル余りの青竹に青い杉
玉が出番を待っていた。警備員のマイクが耳元で
騒がしい。一瞬、灯りが消えると回廊から修二会
僧のお松明が駆け上がった。 平成の最後を飾る
修二会、火の粉いっぱいに浴びてきた。きっとい
い記念になるだろう。     荻野浩子

竹のライン 

☆お知らせ

作品をお寄せください。
雑詠五句(自選・新作旧作不問)

エッセー、柳論など(字数制限なし
テーマ自由・)随時掲載します。

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自作のものは表紙に使う場合があります。

次号は8月に発行いたします。
原稿(メール)は7月中に届くようにお願いします。

注=文書はなるべく早めの送稿をお願いします。

     編集・作成部より・muneo



プロフィール

よしのすぎ

Author:よしのすぎ
 柳壇【こぼれ花】

連絡先・奈良県吉野郡下市町
☎・FAX 0747-52-0132
  鶴本 むねお 


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