川柳倶楽部  繭の

       風景_QVga


     歳月に押し流された夢いくつ

     スイッチオン背中を押した鰯雲

           福田  道子 (天理市)

     薔薇開くこの一瞬に人を恋う

    シュラ紀の雨に恐竜が脱皮する

         日下部 敦世 (松戸市)

     蝉が轢かれて蟻が喜ぶ

     カラスの涙たぶん透明

      板垣 孝志  (大和高田市)

     無礼講で通すわたしのアッパッパ

     風止んだときから空蝉のポロリ

      萩野 浩子 ( 堺  市 )

     とりあえず揺れるこころはおいてゆく

     関守石いまなら情けだとわかる

      ひとり 静  (大和群山市)

     名月へ月下美人が咲き競う

     足袋を買い母に渡した恩返し

      那須 鎮彦  ( 五條市 )

     とまどってばかりの9月の病葉

     母さんと和平条約結びたい

      西澤 知子  ( 橿原市 )

     ボールペンかすれて丸が書きにくい

     秋が来て愛のカタチも変わります

       尾崎 ゆめ  ( 大阪市 )

     抱擁の十指よザクロ熟れてゆく

     柿の実をゆらし神輿の道となる

       枡井 重子 ( 大淀町 )

     草刈機唸るおんなと思われず

     ぶつかりしドアにもの言う残暑かな

       増春 千代子 ( 黒滝村 )

     強情で頑固だから君が好き

     停めてください私ここで降ります

       上田 ひとみ ( 三田市 )

     分が悪くなるとたちまち無口になる

     芸術に触れて豊かになるこころ

       辻 麻梨子 ( 御所市 )

     古稀の門文殊の知恵を借りてくる

     君の母さんどっこい生きるペンの先

         南 芳枝  ( 五條市 )

     見送りの小さな陰が背伸びする

     小半日善女になって御法聞く

          岡田 妙  ( 下市町 )

     真っ白な男の足のうらよ哭け

     晩秋はことさら夕焼けのすべり台

       鶴本 むねお  ( 下市町 )
                                          
          
       桜井思案坊に思う     南 芳枝

 7月から、五條市登録文化財 「藤岡家」で展示されていた
川柳作家・桜井思案坊の資料が9月30日幕を閉じる。
約60点の資料は、桜井晃二さんが保管していたもので、
没後40年という節目に公開された。私が所属する「五條あ
かね川柳会」を立ち上げその後、博多成光・片岡つとむ・河
合渡口氏らと奈良県川柳連盟設立にも力を尽くすなど功績
は多大である。この展示会が開催されている7月21日、藤
岡家で恒例の「あかね稜線句会」を行うことができた。
大広間いっぱいの出席者で盛会であった。各柳社から、不
便な五條に来ていただいたこと、また桜井晃二さんが思案
坊氏の思い出を語ってくださったことも心に残った。

 なによりも、会長はじめ会員の方々により、約90年の歴
史ある「五條あかね川柳会」が存続していることに感謝しな
いではいられない。他柳社も同じ傾向にあると思うが、会員
の高齢化で出席率は減ってきている。今が踏ん張りどころと
思うが、会員一同力を合わせている現状である。思案坊氏
のこの度のよみがえりで、神通力を得た思いがしている。
今後は、若い人や多くの人に川柳を発信すると共に、小学生
から高校生までのジュニア世代にも広げていきたいと考えて
いるところである。              芳枝


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        あ と が き
◆ 中秋の風物詩、彼岸花が界隈の土手を真っ赤二染めている。どこか毒々しげで、それでいて弱々しい優しさを兼ね備えた花。詩歌の世界でも好んで詠まれるこのヒガンバナ。少々の気象変動があっても、秋のお彼岸になると計ったようにきっちり咲いてくれる律儀者であったが、どうも今年は様子が違う気がする。 彼岸まで間がある8月の終わり頃から開きはじめるもの、そしてもう10月のはじめというのに今も炎え盛っている頑固者もいる。長く目を楽しませてくれるのは佳いが、地球異常気象が叫ばれてる昨今だから妙に気懸りだどうか一凡人の取り越し苦労であれば!と願う秋日和の呟きである。
◆№4を無事お届けできるよろこびに浸る。いくらお金を掛けても大半が句会報にページを割き、内容が希薄な川柳誌が多い中で、薄っぺらでもいい。一句一句の作品に心を込められているのがよく分かる。取り扱う側も心しなければ、と肝に銘じている。     
山水                                                                    【む】



   
  
                        キャプチャ001 

                川柳倶楽部   繭の会aki_0329.gif
 思慕ひとつ雲の流れが速くなる 福田  道 子
 アスファルトの匂い銀色の夏が来る 日下部 敦 世
 ペットポトルに酔える焼酎 板垣  孝 志
 干涸びた脳へただいま充電中 萩野  浩 子
 ポイポイと捨ててしまったもののこと ひとり  静
 清流のシラスウナギも月を愛で 那須  鎮 彦
 僕だってのみたい妻の養命酒 西澤  知 子
 駆け付ける形に掛けてある帽子 尾崎  ゆ め
 スープが濃い十五夜の皿回し 枡井  重 子
 台風の落し物掃く老母かな 増春  千代子
 小さくてとても愛しい今日の幸 上田  ひとみ
 農家より先に新米いただけり  辻  麻梨子
 飼い主に似てよう笑ううちの犬  南  芳 枝
 座の空気不器用者に読めぬまま 岡田   妙
 反射材貼ったあたりが痙攣す 鶴本  むねお
 
     エッセー      夏休み今昔    萩野 浩子

 孫たちの夏休み宿題も終わった日、昼食をともにした。
何が食べたいのかと聞いたら、すかさず四人とも回転寿司
いいという。厳しかった炎暑の疲れもあり、食も進まなか
ったけれど、孫たちに押されて行った。

 平日というのに店は混んでいた。ほとんどが祖父母と孫
の組み合わせ。娘たちはよく利用するのか手馴れたもので、 
孫がお茶を入れてくれた。
店内はひと皿百円のお寿司がくるくる回っていた。 夫も私
も落ち着かない。好きな皿を取るのだが、タイミングがむず
かしい。 私はやっと炙りサーモン、胡瓜巻きを上手く取るこ
とができた。その他に食べたいものがあればメニューを見て
、ボタンを押し注文をする。するとすぐ上のレールから
飛んで来る。うどんから赤だし、茶碗蒸し、デザートまで何で
もある。皿によっては百五十円、二百円と皿の色で分けてあ
る。機能的なシステムだ。食べ終わった皿はテーブルの端に
入れると、五皿でゲームができる。遺跡の宝探しや、バレー
ボールの当たりはずれが画面に出る。それが楽しいようだ。 
大抵ははずれだが、たまに当たる。 五皿食べようと必死
になっている。 美味しさより、ゲームで客をとる店のやり方
に唖然とする。それにしても孫たちは食欲旺盛だ。

 落ち着かない食事をしながらパリ旅行の話、夏祭りの花火
大会やバレーの発表会など楽しそうに娘たちは喋る。あっと
いう間に時間は過ぎた。ふと、飽食時代に育った孫たちに、
この回転寿司の記憶はあるかもしれないけれど、味覚など
残らないと思った。

 誰もが貧しかった時代だが、六十年前のあの夏の日が忘
れられない。やはり夏休みの宿題が終わった日、弟と一緒に、
父に連れて行ってもらったカレー専門店のカレーライスの味。
スパイスの効いたなつかしい味。生卵だけ乗ったシンプルで
辛かったけれど、 コクのある深い味だった。
ハウハウ汗掻きながら食べた。美味しかった。香辛料のなに
か分からないけれど、街を歩くと時々その匂いに出会うことが
ある。 身の引き締まる思いになって元気が出てくる。
                     荻野 浩子thumb_20130829120437_521eba45631c6.jpg


                                                              



            
                        あけび      撮影  T・T
                   
きままに鑑賞01        

         異国での夕陽の赤は血の赤か

        ふるさとへ続くかなしい自問坂

 前号エッセーでは「夏くればまた無言館」と題する
かなしくも慟哭の戦時記録を切々と述べられた。
同館を訪ねたあまりの衝撃を一気に書かれたのだ
ろう。字面を追うごとに戦争の愚かさ、無念さが生々
しく伝わる。そして、敗戦69年を経たいま、集団的
自衛権なる怪物に、国民の多くがもつ疑念を鋭く
政治に向けて相対している。
 浩 子

         遺言にしては騒々しい蝉だ

        一切と書き無と書き蝉は仰向けに

 真夏の都会を大謳歌するセミ軍団は、すさまじい
勢いでひと夏を駆け抜けた。蝉には短すぎる命でも、
人間様は閉口。ただ、彼らに手向ける哀悼の句も添
えて、人間味豊かだ 。「一切」「無」はいわずと知れ
た仏教用語でもある。
 孝 志

       何もないここを結んで置きました

       病院のスリッパの音ふっと海

 独自の叙法が板について読者を楽しませてくれる
ひととき。「何もない」ところに言い分が隠されて心憎
い。ただならぬ慌ただしさをおもうスリッパに広大な
 「海」 を連想するなど、常人の域では想定外、この
あたりに非凡が躍動する。
ひとり静

       どうしても訳が知りたい男たち

       宜しくねここからきっと笑えるよ

 毎回すべて新作で挑戦される気概に敬服。書き
ためた句を小出しにする手もあるが、最新作には
また格別の想いがある 『ふあうすと』 はじめ、
各柳壇への作品づくりは並大抵ではないが、老
練と呼ばれる人もそんな時期を超えて今がある。
 ひとみ

       割れやすいコップはいつも美しい

       父母の窓に優しいセロテープ

 「割れやすいコップ」に、ある方向性が見える。
このような表白は一種の擬人法であろうが、近年
、ソフトタッチの作調がもてる所以でもある。何は
ともあれ、 新鮮がが魅力の本欄、どの句も見事
にニンゲンの急所を捉えて共感するものが多い。
 ゆ め

       渋皮のままで美人の妻である

       ヒットラーの妻もゴキブリは苦手

 先ず、 編集人の落ち度で作者違いを詫びる。
渋皮を剥けば如何ばかりか・・・  と末恐ろしく
なるが、それにも増してあのヒットラーの嫁さんが、
ゴキブリが苦手だったと、他に誰が想像したで
あろう。自分勝手な着眼が、 意外な傑作を生む。
 知 子

       見詰めると山は昔を語りだす

       山鳴りに男は守るものがある

 独特の辰雄川柳が集結する。 このかたちが
出来るまでに、 試行錯誤の日々を積み重ねた
に違いない。 まだまだのびしろを隠し持つ優し
い目に、これからの一作一作をたのしみにして
いる。
 辰 雄

       納得の答が欲しい経を読む

       妻のこと子のこと鬼は律儀者

 相当な多作家で、何げなくつぶやく一言がす
でに川柳として書き残される。 もちろん軽いも
のも少なくないが、 妻子のことになるとひとし
お責任感が強く、 修羅にも似た形相で重くの
しかかる。
 鎮 彦

       バッグには離婚届と漫画だけ

 齢を重ねても常に新境地を目指すベテランの
句に頭の下がる思いで五句を抄出する。 「離
婚届と漫画」 なんて発想はあたらしく映る不可
思議。
 重 子

       真っ白な夕顔咲きてときめきぬ

 ユウガオが真っ白にみえるほどときめいた作
者は生来純真な生まれつき、 だから飽きずに
川柳とお付き合いが出来る。 身辺雑記でも良
い、 ますますお元気で鉛筆を走らせて欲しい。
 千代子

       川柳の種を育てているキツネ

 芳枝作品によく登場するキツネは、 どうやら
自らの想いをメルヘンの世界に投影させて遊ん
で見たのか。そこに、 人を騙したりそそのかし
たりしない、 小悪魔的で愛すべき野生の姿を
活写した。
 芳 枝

        腫れ物をおこらせたのはわたし

 何もかも言い過ぎるきらいは徐々に克服しつ
つあり。それぞれの句に説得力が見えてきた。
掲載句は、他人の悪口を言うのが川柳! と
勘違いする輩を説得するに十分な作。
 麻梨子
                             【文責・むねお】

                               



プロフィール

よしのすぎ

Author:よしのすぎ
 柳壇【こぼれ花】

連絡先・奈良県吉野郡下市町
☎・FAX 0747-52-0132
  鶴本 むねお 


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