プロフェッショナル

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                      風伝の朝霧(風伝おろし)     

    晩秋から春先早朝見られます。山の向こうで発生した霧が南側にあ
   るこの小さな村になだれ込んで来ます。風の通り道ですね。ここに住
   み三十年程になりますが、一度、我が家の勝手口までこの霧が流れて
   来たことがあります。写真愛好家がこの風景を寒い朝待っているのを
   見かけますが、そう頻繁には起きません。この村の俗名「尾呂志」は
   ここかららしいです。【写真と文・山口亜都子】
  
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  柳壇こぼれ花 № 18号ー3
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酉年の抱負がのぞく賀状から

   荻野 浩子 (堺市)
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麦の殻 百粒吐いて許されず

   山口 亜都子 (三重・御浜町)
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雨音はショパンやんわり春である

   西澤 知子 (橿原市)
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悠然と地震の国の観覧車

   板垣 孝志 (大和高田市)
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悲しみの真ん中あたり眠くなる

   句ノ一 (伊豆の国市)
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わかりましたとここも剥がしているテープ

   ひとり静 (大和郡山市)
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そばにあるだけで現役古時計

   毛利 由美 (つくば市)
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遠くなるあなたを探す日記帳

   上田 ひとみ (三田市)
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本命チョコが狙う不意打ち

   森吉 留里惠 (柏原市)
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生い立ちは知らずわずかに国訛り

   山崎 夫美子 (大和郡山市)
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燃え直す力をくれた糸電話

   久保田 眞子 (土佐市)
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無駄を積み余生の幅を広くする

   佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
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アウシュビッツへ向かう雪の夜のバス

   日下部 敦世 (松戸市)
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麻雀はしないが貯金なら出来る

   那須 鎮彦 (五條市)
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傍らに虹がスックと立ち上がる

   南 芳枝 (五條市)
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小癪なり錠剤どれも自己主張

   鶴本 むねお (下市町)
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 エッセー
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  プロフェッショナル  句ノ一


 「どうぞーどうぞー、ご迷惑をおかけします。
はい、どうぞー、すいませんねー」下校の小学生
には、「慌てないでいいですよ、はいどうぞー、
気を付けて帰ってね~」その女性は、小さな小さ
な体で懸命に旗を振る。
 道路工事の旗振りです。去年の12月から、わ
たしの家の前の道100メートルほどの距離を、
掘っては埋め、掘っては埋め、交通量の多い師走
の県道を、何回も行ったり来たりして、迷惑な水
道管工事が行われています。彼女は、年の頃は、
おそらく、60代いや70代かもしれません。
現場の男たちの中で只一人の女性です。日焼けを
通り越した茶色の肌に、細身でおそらく、140
センチにも届かない身丈に、厳つい男達と同じ、
濃紺の防寒着をぶかぶかと着込み、黒い長靴を履
き、日曜を除く毎日、朝から日没まで交通整理を
しています。工事のダンプが道路に土を零せば、
即座に旗(実際はライトだがあえて旗と呼ばせて
頂く)をポケットに入れ、サッと竹箒に持ち替え
掛けつけ、手際よく、散らばった土を歩道から除
去する。道を横断しょうとする人あらば、たとえ
遠くにいても駆けつけて、誘導してくれる。彼女
の視野は360度なので、どんな歩行者も、猫で
さえも見逃さない。「気を付けて渡って下さいね、
ご迷惑をおかけします」と、一言声をかけ、きち
っと礼をする。その仕事への誠意と熱意、そして
彼女の人柄のあたたかさ、それら全てが正にプロ
フェッショナルだ!と感嘆しました。
 彼女の誘導は、運転手と歩行者に信頼と安心感
を与えます。そして、現場の安全を守るという強
い使命感を感じます。彼女を初めて見た時わたし
は、小学生かと思ったほど小柄な女性です。1週
間もしない内に彼女の仕事ぶりは、近所の評判に
なっていました。 
 この界隈でいちばん気難しく、隣人に笑顔など
見せたことのない女性が、彼女の誘導で道を横断
する際、「どうもありがとう」と嬉しそうに微笑
みを浮かべながら道を渡っている様子を見た時は、
本当に驚きました。
 塾生の中学生にそのことを話すと、生徒達は
「ああ知っています。小さいおばさんでしょう?
凄い頑張ってる、すごい親切!」と眼を輝かせて
答えました。わたしが、「でしょ、でしょう?仕
事というのは、あんなふうに真剣に取り組むもん
なんだよ。すばらしいね。彼女を見ていると、先
生も旗振りやりたくなるくらい」と言うと、「先
生が?無理無理!」と言われてしまいましたが、
中学生にも,凄い!と思わせる彼女は、真のプロフ
ェッショナル仕事人だと思いました。
 「どうぞー、どうぞー、ご迷惑おかけします。」
今冬いちばんの寒空に、ゴーゴーガーガー!工事
車両の騒音と、彼女の明るくて力強い声が響いて
います。
            句ノ一
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こぼれ花散策

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                柳壇「こぼれ花」№18号--2
  (前号作品から抜粋)板垣 孝志
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    異次元へ影は立ったり座ったり    

    どう生きる七十過ぎの子猫ちゃん
   眞子

 作者も私もほぼ同年代。 七十ともなると短期
記憶がややこしくなる。今持っていたモノが突然
消えたりする。では体力はどうかと腕立て伏せを
やってみた。若いころは三十回くらいできたのだ
が、五回ほどで肩の関節が「ゴキ!」と鳴った。
古希の由来はここから来て・・・いない。
 毎年四歳ずつ歳を取る猫との余生。長生き比べ
でもやりながら過ごしましょうか。
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    ゆっくりと満ちるものあり林住期


    あせらない前頭葉に螺子巻いて    浩子

 戦後から東京オリンピック、 そして万博と我武
者羅に働いて来た年代が老人になった。「俺たちが
築いてきた日本」が親殺し、子殺し、孤独死、介護
心中・・・情もモラルも無い国になって仕舞った。
老人は切れるのだ。
 優先席に座った若者に「立て!」という老人に
「なんで?」と首をかしげる若者。とても作者の心
境には至れない。前頭葉の螺子は巻き過ぎて、
とうの昔に切れている。
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    脱水に負けた形状記憶シャツ     由美

 初期の洗濯機は渦潮を真似て、一生懸命に水を
回して働いていたが、最近の洗濯機はグリッグリ
ッとしか回らない。洗剤が良くなったからこれで
良いらしいが、団塊の世代の目には怠けていると
しか映らない。その代わり脱水の回転スピードは
格段に速くなった。形状記憶シャツの海馬も前頭
葉も振りとばす勢い。そういえばウチの掃除機は
畳の茣蓙ピンまで吸い込んでしまう。
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    絶望をかじっておくとあとが楽    亜都子

 子供の頃の散髪は祖父か父が両手で使うバリカ
ンで強制執行された。その痛いこと痛いこと、
刈るのではなく抜かれている感覚であった。いつ
も泣いていた。その涙に髪の毛が引っ付いて、ま
るでハゲ頭のタヌキの有様であった。
 散髪が終わると祖母が飴玉を出してくれたが、
髪が伸びてくる度にいつも絶望感に襲われた。
 苦い薬を飲んだあとの苺は甘いが、飴を食べた
あとの苺は酸っぱい。だから絶望も味わっておけ
ば人生捨てたものではないらしい。
 ところが現在の弱者は苦いクスリばかりを飲ま
されている気もする。
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    引き分けの夫婦であきらめも早い    知子

 「蛇口をしっかり閉めてないから水が漏れてる、
本当に何度言ったらわかんの!」と怒る家人もト
イレの灯りのスイッチは度々消し忘れている。
 報復処置が」怖いので、こちらは反論しないが
不治の病ようにお互いに諦めているのは確かか。

    真実隠す恐ろしい蓋       留里惠
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 アレはどうなったのでしょうパナマ文書。大金
持ち専用の超法規的優遇脱税処置。マスコミも怖
がって触れたがらない話。千葉大学医学部のレイ
プ事件も、法曹界の大物の息子がいるとかで長い
こと名前が公表されなかったし。世の中怖いです
ね、恐ろしいですねえ。
 それにもう一つ、これを書くと、変な死に方を
するかも分からないないので止め。
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    気がつかぬふりをしているのがキリン   静

 牛は表情に乏しい。「いか様にでもして下さい」
という態度だからステーキにされてしまう。馬は
怒ったら噛み付くし蹴飛ばしもする。だからステ
ーキには向かない。キリンも表情は乏しいが高い
位置からすべてを悟った顔で観ている。
 同類同士で殺し合うニンゲンは哀れな生き物だ
と、大昔から気付いていたのだ。
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    近づくと少年だった青い薔薇 
    句ノ一

 多感でひ弱で、触れたら傷つく・・・サント
リーグローバルイノベーションセンターという長
い名前の研究所が長い歳月をかけてシニアジンで
はなくシアニジン(赤色素)を減らし、デルフィ
ニジン(青色素)を増やして作りあげたそうだ。
花言葉は【不可能】から【夢かなう】に変更され
た。 薔薇に尋ねてみたら【いらぬおせっかい】
にして欲しいと言うかも知れない。
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    人間の心を丸くする法話      辰雄

 故人になられたが薬師寺の元管主・高田好胤師
は笑わせて泣かせる法話の名手であった。修学旅
行の生徒の、延べ六百万人が聴いたという。
 薬師寺の西塔復興の為に一巻千円の勧進写経は
百万巻を達成、みごとに西塔は建て直された。
『かたよらない心・こだわらない心・とらわれな
い心・・・』テレビ番組でも沢山の人々が高田好
胤の話を楽しみにしていたのだが、「一つの宗派
ばかり放映するな」と横槍が入り番組は終了した。
拘わった宗派はどこか知りたいものである。
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    蝉時雨私を隠す穴を掘る    敦世

 「閑さや岩にしみいる蝉の声」松尾芭蕉の句を
読んで蝉時雨はやかましくないのかい?と子ども
の頃から不思議に思っていたのだが、蝉時雨しか
聞こえない静寂であると解説書にあった。
 広大無限な山河を庭として捉えたらそのような
心境になれるので有ろう。
 木の葉を隠すには森の中が良いという、作者が
掘ろうとする穴は、無数の蝉が羽化を目指して抜
け出した穴の辺り、ここならば見つかりにくい。
こぼればなillust444 
    仏頭のうしろ空洞だった月あかり   夫美子

 インド・中国・韓国と東に拡がった仏教は日
本が終着地になっている。
京都と奈良は特別に寺院が多いように感じるの
だが、文化庁のデータによれば一位は愛知の4
600、二位は大阪3400、三位が京都31
00、奈良は1800で十六位。
 人口比率では一位が滋賀、二位福井、三位が
島根となっている。
 仏像の後ろは鎌倉大仏さまか奈良の大仏さま
以外では拝観しにくい。いずれも見上げる体勢
、奈良の大仏さまの背面は金ピカだそうだ。
 作者は仏頭の後ろを観る機会があった。何か
の期待感を込めて・・・そこが空洞と知った時、
月のあかりに似た虚ろを感じたのかも知れない。
こぼればなillust444 
    放浪の牝猫に雨降り止まぬ  
  むねお

 かって洋酒サントリーのCFに雨の中をさま
よう子犬の姿があった。名前はトリス君。
 寒さに弱い猫に降りかかる雨はことさらに身
にしみるであろう。生き残るため「行間をじょ
うずにくぐり抜けてきた」と述懐する作者の想
いは、先に逝ったものたちに有縁無縁の石を積
ませ、なおも絶滅危惧種ニンゲンの行く末をも
気遣う。
こぼればなillust444 

きままに鑑賞01

      <前号評者作品から> むねお

    右足が短くなった多数決     孝志

 右足が短くなったらどうなるのだろう考えた。
なるほど…と言うのもおかしいが、当然右側に傾く
のは必至。トランプ大統領が現実となったとたん世
界がややこしくなって、最近西欧諸国でもにわかに
極右政党の台頭が際立つ。いきなり世界大戦に繋が
ることは無かろうが、益々平和が遠のいていく気配
だ。我が国でも、既に「集団的自衛権」が成立、何
時でも交戦できる状態へ。その勢いに乗って改憲論
議が熱を帯びつつある。平和憲法が邪魔だという政
党の一人勝ちを食い止めねば、またぞろあの忌まわ
しい戦争の禍根をくり返すのか、と想像するだけで
身の毛がよだつ。時事吟もこのように表現されると、
にわかに文学性が帯びてくる。
  最近、ある新聞の読書投稿欄に《…少数意見の中
にこそ、日本国憲法の三原則(国民主権、基本的人
権の尊重、平和主義)を守り抜こうとする気概が脈打
っている…》の一節があった。

   背開きのほうがあの世で顔が利く  孝志

 子どもの頃ふるさとの川でよくウナギを捕った。
もちろん獲物は自分で始末しなければならない。先
ずウナギのど頭(どたま)に錐を突っ立てて捌きに
かかるのだが、大抵背開きにした。意外にその方は
開きやすかったからかもしれない。大人になって知
ったことだが、ウナギは関西が主に腹開き。関東で
は背開きにするとか。何にも分からないままやって
いたことが、どうやら関東風だったようだ。
「それがどうした」で済まされることながら、
この句を読んでいて妙に通ずる処がありそうな気に
なってきた。「あの世で顔が利く」には降参。

                                                       むねお

    


葛城山の雪化粧
 
             葛城山 (Custom) 
                       葛城山の雪景色        画像提供・板垣孝志
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   柳壇こぼれ花 № 18号

よろこびをぎゅっと握って喜寿の春

   荻野 浩子 (堺市)
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握りしめるシリカゲル涙のかわくまで

   山口 亜都子 (三重・御浜町)
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二度づけ禁止串カツの正義感

   西澤 知子 (橿原市)
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真ん中に地獄が見える五円玉

   板垣 孝志 (大和高田市)
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ウェルテルの悩みはつづく新学期

   句ノ一 (伊豆の国市)
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たましいをそこで使っちゃいけません

   ひとり静 (大和郡山市)
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ちょっと間違えたで済まぬ毒キノコ

   毛利 由美 (つくば市)
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これからというアイマイに流されて

   上田 ひとみ (三田市)
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或る日クルッと過去が振り向く

   森吉 留里惠 (柏原市)
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哀歓はたまご転がす先にある

   山崎 夫美子 (大和郡山市)
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思い出が冬の底から榊から

   久保田 眞子 (土佐市)
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夢の数つないで命予約する

   佐藤 辰雄 (奈良・川西町)
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雪の日のバスは異界へ消えていく

   日下部 敦世 (松戸市)
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家を買う頭金なり退職金

   那須 鎮彦 (五條市)
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このボタン押せば七十路の崖っぷち

   南 芳枝 (五條市)
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雪山賛歌 悪友とひびきあう

   鶴本 むねお (下市町)

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        酉 歳  2017 年 (年賀より)


                        lこぼればな3ine32
一粒の麦地に落ちてひろがる絵   
         (坂根 寛哉)
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平和とは穏やかな風吹くところ   
       
(杉野 まつ子)
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プロセスを組み替えて翔ぶ酉の年  
         (佐藤 辰雄)
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心配しないで鳥には鳥の影     
          (ひとり静)
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玉砂利の深々としてゆく神々と   
        (山崎 夫美子)
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人生に彩り添えてきた出会い    
         (毛利 元子)
こぼればなillust444
幻聴かも知れぬたしか神の声    
         (荻野 浩子)
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平凡な世を寿いで諌古鳥      
         (菱木  誠)
こぼればなillust444
鬼百合のいくつ闇見て夕焼け色   
        (山口 亜都子)
こぼればなillust444
誤字の絵馬がんばれ受験生諸君   
         (毛利 由美)
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オットット今年も跨ぐお正月  
          
(句ノ一)
こぼればなillust444
こけこっこう新たな刻を心して   
       
(飛永 ふりこ)
こぼればなillust444
どんな苦労にも花咲く酉の年    
        (那須 鎮彦)
こぼればなillust444
新しい年へ希望の匂い立つ     
        (大内 朝子)
こぼればなillust444
地に足をつけて時には羽搏いて   
        
(山田 順啓)
こぼればなillust444
雄鳥の起床喇叭がひびく朝     
        (土田 欣之)
こぼればなillust444
幸せをトリ込む鬼を追い払う    
        (村山 佳子)
こぼればなillust444
こそこそとこそを重ねて八十五   
        (西久保 隆三)
こぼればなillust444
瑞鳥とめでたく新年が明ける    
       
(吉川  卓)
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初詣着物姿で観る景気     
      (出口 セツ子)
こぼればなillust444
新春へ一番鶏の心意気       
     (中山 恵美子)
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※今年も、「柳壇こぼれ花」ブログ
 宜しくお願い致します。T

プロフィール

よしのすぎ

Author:よしのすぎ
 柳壇【こぼれ花】

連絡先・奈良県吉野郡下市町
☎・FAX 0747-52-0132
  鶴本 むねお 


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